VP of Customer Success
(ぶいぴーおぶかすたまーさくせす/Vice President of Customer Success)
- 起点・背景(海外)
- 1996年
- 更新
- 2026-09-24
一言でいうと
VP of Customer Successは、契約後の顧客を支えるカスタマーサクセス組織を統括する役職で、顧客の利用の定着、契約の更新、既存顧客での売上の拡大に責任を負います。
この職種の出自と登場時期
カスタマーサクセスという部門の起点として、1996年のVantiveの取り組みが挙げられます。Marie Alexanderは自身の公式サイトで、1996年にCRMソフトウェアのVantiveで最初の正式なカスタマーサクセスのプログラムを作り、カスタマーサクセスマネージャー(CSM)の役割を立ち上げたと説明しています。
ソフトウェアを月額や年額で提供するSaaSの事業モデルが広がると、契約の更新と拡大が売上を左右する構造になり、カスタマーサクセスを独立した部門として置き、その責任者にVPの肩書きを与える企業が現れました。GainsightのCEOであるNick Mehtaは2014年7月の記事でVP of Customer Successの職務記述書の例を示し、統括する活動として導入支援・研修・プロフェッショナルサービス・サポート・CSM・契約更新・クロスセルとアップセル・顧客の推奨の獲得を挙げ、成果として更新率の向上と解約の抑制、既存顧客での売上の拡大を挙げています。
国内でも、SaaS企業を中心にこの肩書きや「カスタマーサクセス責任者」「CS部長」の名称が使われています。
ミッション
VP of Customer Successは、顧客が製品を使って成果を上げ、契約を更新し、利用を拡大する状態に責任を負います。解約率、売上の継続率(NRR)、顧客の利用状況が主な判断の対象です。
事業モデルによって責任の範囲は異なります。契約の更新とアップセルの売上目標まで負う企業と、利用の定着と顧客満足を目標とし、更新の交渉は営業が担当する企業があります。
主な業務範囲
- カスタマーサクセスの戦略と、顧客区分ごとの支援の方針の決定
- 導入支援・サポート・CSMなどの組織の設計と運営
- 顧客の利用状況と解約の兆候を示す指標の設計と管理
- 契約更新とアップセルの計画と、営業部門との分担の設計
- 顧客の要望の集約と、プロダクト部門へのフィードバック
- 解約率・継続率の経営層への報告
求められる能力
VP of Customer Successには、解約と継続の数字を分解して原因を特定する力が求められます。解約が、導入の失敗、利用の停滞、顧客側の担当者の交代、競合への乗り換えのどこから来ているかを切り分け、打ち手を決める力が中心です。顧客の利用データを扱うツールと分析の知識も必要です。
非技術面では、営業・プロダクト・サポートの責任者と、顧客の引き継ぎの基準と要望の扱いを合意する調整力が問われます。重要な顧客の経営層と直接対話する力も必要です。
この職種に就く人のキャリア経路
カスタマーサクセスマネージャーからマネージャー、部長を経て就く経路が一般的です。営業、サポート、導入コンサルタントの責任者から移る例もあります。
その後は、CROや、顧客対応の部門全体を統括するCCO(Chief Customer Officer)、COOへ進む経路があります。
隣接職種との違い
| 比較対象 | 責任の範囲 | VP of Customer Successとの違い |
|---|---|---|
| CRO(上位) | 収益全体(営業・マーケティング・契約後) | 収益部門全体を統括する。VP of Customer Successは契約後の顧客に限る |
| VP of Sales(同階層のVP職) | 営業組織の運営と契約の獲得 | 新規の契約が対象。VP of Customer Successは契約後の定着と拡大が対象 |
| VP of Marketing(同階層のVP職) | マーケティング組織の運営 | 需要の創出が対象。VP of Customer Successは既存顧客の成果が対象 |
| カスタマーサクセスエンジニア(配下の職種) | 導入後の顧客の技術面の支援 | 個別の顧客の技術的な課題を解決する。VP of Customer Successは組織と指標を運営する |
上位職・下位職・同階層のVP職と比べると、次のような違いがあります。企業によって置かれ方は異なるため、目安として示します。
| 役職 | 意思決定の範囲 | 予算・採用の権限 | 取締役会との関係 | 組織規模の目安 |
|---|---|---|---|---|
| CRO / CCO(上位) | 収益全体、または顧客対応の部門全体の戦略 | 収益部門または顧客対応部門の予算の配分と、VP職の採用 | 経営会議・取締役会に収益や顧客の指標を説明する | 収益部門全体、または顧客対応部門全体 |
| VP of Customer Success | 契約後の顧客対応の方針と組織の運営 | カスタマーサクセス組織の予算の執行と、マネージャー・担当者の採用 | 上位のCxOを通じて報告する。上位のCxOを置かない企業では直接説明する | 導入支援・サポート・CSMなどを含むカスタマーサクセス組織 |
| VP of Sales(同階層) | 営業目標の達成に向けた組織の運営 | 営業組織の予算の執行と採用 | 上位のCxOを通じて報告する | 営業組織 |
| VP of Marketing(同階層) | マーケティングの施策と組織の運営 | マーケティング予算の執行と採用 | 上位のCxOを通じて報告する | マーケティング組織 |
| カスタマーサクセスマネージャーの責任者(下位) | 担当する顧客区分の運営 | チーム内の配置と、採用への関与 | 直接の関わりは少ない | 1つまたは少数のチーム |
採用担当の見極めポイント
- 候補者が更新とアップセルの売上目標を負っていたかを確認してください。売上目標を負っていた人と、利用の定着が目標だった人では、自社で任せられる範囲が異なります
- 解約率を下げた経験について、原因の分析と打ち手を具体的に聞いてください。担当者の頑張りではなく、仕組みや指標の変更で説明できる場合は、組織を統括する立場で成果を出してきたと判断できます
- 求人票には、営業との分担(更新の交渉を誰が担当するか)と、統括する機能(サポートや導入支援を含むか)を明記してください。企業の事業モデルによって、この役職の範囲は大きく異なります
求人・市場の傾向
VP of Customer Successの募集は、B2BのSaaS企業を中心に見られます。カスタマーサクセスの組織の歴史が浅い企業が多く、組織を立ち上げた経験を持つ候補者は限られます。求人票では、組織の人数、担当する顧客の区分、売上目標の有無を明記する必要があります。