VP of Marketing
(ぶいぴーおぶまーけてぃんぐ/Vice President of Marketing)
- 起点・背景(海外)
- 1931年
- 更新
- 2026-09-24
一言でいうと
VP of Marketingは、マーケティング組織を統括する役職で、市場の選定、見込み客の獲得、ブランドの構築に向けた施策と組織の運営に責任を負います。
この職種の出自と登場時期
企業がマーケティングを専任の担当者と組織で扱う考え方の起点として、1931年のP&Gの社内文書があります。英語版Wikipediaによると、P&Gの広告部門にいたNeil H. McElroyは、同年、石けんブランドCamayの広告を担当するなかで、ブランドごとに専任の担当者を置くよう求める3ページの文書を書きました。この提案は受け入れられ、ブランドを1つの事業のように管理する方式は、その後米国の消費財企業に広く採用されました。
VP(Vice President)は、米国企業で部門の責任者に与えられる役員級の肩書きで、VP of Marketingはマーケティング部門の責任者を指します。英語版Wikipediaは、CMOが通常CEOに報告し、CMOの下に上級副社長(SVP)、副社長(VP)、ディレクターが置かれる構造を記述しています。CMOを置く企業ではVP of Marketingはその下で実行を統括し、CMOを置かない企業ではVP of Marketingがマーケティングの最上位の責任者になります。
国内でも、外資系企業やSaaS企業を中心にこの肩書きが使われています。日本企業では「マーケティング部長」「マーケティング本部長」が近い役職にあたります。
ミッション
VP of Marketingは、事業の成長に必要な見込み客と需要を、決められた予算のなかで継続して生み出すことに責任を負います。B2Bの企業では、営業に渡す商談の数と質、獲得の費用が主な判断の対象です。
CMOを置く企業では、CMOが決めた方針と予算のなかで施策と組織を運営します。ブランドの一貫性を保ちながら、短期の見込み客の獲得と長期の認知の向上の配分を決めることも役割に含まれます。
主な業務範囲
- 年間のマーケティング計画と、施策ごとの予算の配分
- 見込み客を獲得する施策(広告・イベント・コンテンツなど)の統括
- ブランドとメッセージの管理
- 営業への見込み客の受け渡し基準の設計と、営業部門との合意
- マーケティング組織の設計と、担当者の採用と育成
- 獲得の費用と成果の分析と、経営層への報告
求められる能力
VP of Marketingには、施策ごとの費用と成果を数字で管理し、予算の配分を見直す力が求められます。見込み客の獲得から商談、受注までの転換率を読み、どの段で改善すべきかを特定する力が中心です。広告運用やマーケティングオートメーションのツール、データ分析の知識も必要です。
もう一つは、営業の責任者との間で見込み客の定義と受け渡しの基準を合意する調整力と、ブランドの方針を組織全体に浸透させる力が問われます。
この職種に就く人のキャリア経路
マーケティング担当者からマーケティングマネージャー、マーケティング部長を経てVP of Marketingに就く経路が一般的です。PMMや広報、広告代理店から移る例もあります。
その後は、CMO、CRO、事業責任者へ進む経路があります。
隣接職種との違い
| 比較対象 | 責任の範囲 | VP of Marketingとの違い |
|---|---|---|
| CMO(上位) | 全社のマーケティングの戦略と予算配分 | 戦略と予算配分から担当する。VP of Marketingは与えられた予算のなかで実行を統括する |
| CRO(上位または同格) | 収益全体(営業・マーケティング・契約後) | 収益部門全体を統括する。VP of Marketingはマーケティング組織に限る |
| VP of Sales(同階層のVP職) | 営業組織の運営 | 需要を受けて受注する側。VP of Marketingは需要を作る側 |
| PMM(下位の職種) | 個別プロダクトの市場投入 | 製品単位の訴求を設計する。VP of Marketingは施策全体の配分と組織を運営する |
上位職・下位職・同階層のVP職と比べると、次のような違いがあります。企業によって置かれ方は異なるため、目安として示します。
| 役職 | 意思決定の範囲 | 予算・採用の権限 | 取締役会との関係 | 組織規模の目安 |
|---|---|---|---|---|
| CMO / CRO(上位) | マーケティングまたは収益全体の戦略 | マーケティング予算の総額の配分と、VP職の採用 | 経営会議・取締役会に戦略と成果を説明する | マーケティング部門全体、または収益部門全体 |
| VP of Marketing | マーケティングの施策と組織の運営 | 配分された予算の執行と、マネージャー・担当者の採用 | 上位のCxOを通じて報告する。上位のCxOを置かない企業では直接説明する | 複数の機能チームからなるマーケティング組織 |
| VP of Sales(同階層) | 営業目標の達成に向けた組織の運営 | 営業組織の予算の執行と採用 | 上位のCxOを通じて報告する | 営業組織 |
| VP of Customer Success(同階層) | 契約後の顧客対応を担う組織の運営 | カスタマーサクセス組織の予算の執行と採用 | 上位のCxOを通じて報告する | カスタマーサクセス組織 |
| マーケティングマネージャー(下位) | 担当する施策や領域の運営 | 施策の予算の執行と、採用への関与 | 直接の関わりは少ない | 1つまたは少数のチーム |
採用担当の見極めポイント
- 候補者が予算の総額を決めていたのか、配分された予算を執行していたのかを確認してください。自社が求めるのが戦略の設計か施策の統括かによって、合う候補者は異なります
- 営業部門と見込み客の定義や受け渡しの基準をどう合意したかを聞いてください。営業との対立を仕組みで解消した経験を話せる場合は、収益部門の一員として成果を出してきたと判断できます
- 求人票には、B2BかB2Cか、見込み客の獲得とブランドのどちらに比重を置くかを明記してください。同じ肩書きでも、求める経験が大きく異なります
求人・市場の傾向
VP of Marketingの募集は、SaaS企業や外資系企業の日本法人で多く見られます。求人票では、CMOの有無と、担当する組織の人数・予算の規模を明記すると、候補者が自分の経験と比べて応募を判断しやすくなります。