CAC
(しーえーしー/顧客獲得単価/Customer Acquisition Cost)
- 登場(海外)
- 2008年
- 更新
- 2026-09-02
一言でいうと
顧客を1件獲得するのにかかった費用で、営業とマーケティングの支出をその期間に獲得した顧客数で割って求めます。
提唱者と登場年
特定の提唱者はいません。初出を示す一次資料はなく、上の2008年は、CACがSaaSの経営指標として組み込まれた記録を確認できる時期を指します。Bessemer Venture Partnersの「10 laws of cloud」は、営業とマーケティングの費用を粗利で回収し終えるまでの期間をCAC回収期間と定義し、監視すべき指標に挙げています。
考え方自体はSaaSより古くからあります。1999年の論文「Churn Reduction in the Wireless Industry」は、当時の米国携帯電話事業で加入者1件の獲得に平均400ドルかかり、新規加入者を1件獲得する費用は既存加入者を1件維持する費用のおよそ5倍だと記しています。獲得の費用を数え、維持の費用と比べる発想が、SaaS以前の通信業界にもあったことがわかります。
何を解決するか
解決したいのは、売上が伸びているのに現金が減っていく理由がつかめないことです。獲得のために先に払う費用と、顧客から少しずつ受け取る収入のあいだには時間差があります。単月の損益だけを見ていると、この時間差が見えません。
CACは、その先払いの大きさを1顧客あたりに揃えます。顧客あたりの生涯価値(LTV)と並べれば、その顧客を取りにいく費用が見合うかを判断できます。
前提として、営業とマーケティングの費用を期間で切り出せることが必要です。人件費・広告費・ツール費を集計できず、獲得数の定義も決まっていない段階では、数字が出ても比較に使えません。
実際の進み方
まず費用の範囲を決めます。広告費だけを入れるのか、営業とマーケティングの人件費やツール費まで含めるのかで、値は大きく変わります。
次に獲得の定義を決めます。無料登録なのか有料転換なのかを固定しないと、月ごとに違うものを数えることになります。
そのうえで、経路ごとに分けて見ます。全体の平均は施策の判断には使えません。最後にLTVと回収期間を並べます。David Skokは、優れたSaaS事業ではLTVがCACの3倍を超え、7倍から8倍に達することもあるとしています。同じ資料は、そうした企業がCACを5か月から7か月で回収しているとも書いています。
導入でよくある失敗
- 広告費だけで計算する。人件費を外すと実際より小さく出て、採算が取れている錯覚が生まれます
- 全社平均だけを見る。紹介経由と広告経由では費用の構造が違い、平均は両方の判断を誤らせます
- 比率だけを見て回収期間を見ない。LTVがCACの3倍でも、回収に3年かかるなら、その間の運転資金が要ります
求人票にこの語がある場合に読み取れること
マーケティングと営業の投資判断を数字で行う組織だと読み取れます。プロダクトマネージャーやマーケティング職の求人でCACに触れている場合、施策は費用対効果で評価されると読めます。
書かれていないのは、その数字の作り方です。面接では、CACに何の費用を含めているか、経路別に分けているか、回収期間を追っているかを聞きます。3つとも答えが返ってくる組織なら、入社後も判断の根拠が共有されると期待できます。
自社側では、採用にかかる費用も同じ考え方で分解しておきます。1人あたりの獲得費用と、その人が定着するまでの期間を並べておくと、候補者に事業側の指標を説明するときの前提が揃います。
隣接手法との違い
| 指標 | 中心にあるもの | CACとの違い |
|---|---|---|
| CAC回収期間 | 支出を粗利で回収し終えるまでの月数 | CACは金額、回収期間は時間。資金繰りの判断には後者が要る |
| LTV | 1顧客が生涯にもたらす利益 | 受け取る側の金額。CACと比べて初めて意味を持つ |
| CPA(獲得単価) | 申込や資料請求など1件あたりの費用 | 対象が顧客ではなく反応。有料契約に至らない件数も数える |
関連キーワード
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