LTV
(えるてぃーぶい/顧客生涯価値/Customer Lifetime Value)
- 登場(海外)
- 1988年
- 更新
- 2026-09-02
一言でいうと
1人の顧客が取引を続けるあいだにもたらす利益の合計で、獲得にかけてよい費用の上限を決めるために使います。
提唱者と登場年
出所として挙げられるのは、Robert ShawとMerlin Stoneによる『Database Marketing』(Gower)です。Wikipediaはこれを1988年の刊行とし、この語を使った最初期の記録のひとつだとしています。Open Libraryにも1988年12月のGower版が登録されています。
生まれた場所はSaaSではなく、通信販売を中心とした直接マーケティングの領域です。誰にカタログを送るかを決めるには、1回の注文額ではなく、その人が今後どれだけ買い続けるかを見積もる必要がありました。Wikipediaは、1990年代にこの考え方を早くから採り入れた企業としてEdge ConsultingとBrandScienceを挙げています。契約が続く前提の事業では同じ問いが成り立つため、SaaSでも使われています。
何を解決するか
解決したいのは、獲得にいくらまで払ってよいかが決められないことです。初回の取引額だけを基準にすると、獲得の投資はほとんど通りません。継続する事業では、判断の基準が初回ではなく累計に移ります。
LTVは、その累計を1顧客あたりに揃えます。CACと並べることで、獲得の投資が回るかどうかを比べられます。
前提として、解約率を測れることが必要です。LTVは平均的な継続期間の見積もりを含み、その見積もりは解約率から出ます。契約が始まったばかりで解約の実績が薄い事業では、値の幅が大きくなります。数字を1つに丸めず、範囲で扱うほうが安全です。
実際の進み方
まず、何を差し引いた金額で計算するかを決めます。Andreessen Horowitzは、売上や粗利の現在価値をLTVと呼んでしまう誤りを挙げ、顧客との関係が続くあいだの純利益で見るべきだとしています。サポートやインフラにかかる費用を差し引かないと、値は実態より大きくなります。
次に継続期間を解約率から見積もります。月次の解約率が2%なら、単純計算では平均の継続期間はおよそ50か月です。
そのうえでCACと比べます。獲得の投資が回るかどうかは、CACとの比率と、その費用を回収し終えるまでの期間の両方で判断します。
最後にセグメントごとに分けます。全社平均は、単価の高い層と離脱の早い層を1つの数字に均してしまいます。
導入でよくある失敗
- 売上ベースで計算する。原価もサポート費用も引かない値は、獲得投資の判断には使えません
- 解約率が安定する前に長期の値を置く。実績の薄い時期の見積もりは、施策の成果と区別がつきません
- セグメントを混ぜる。上位顧客の高い値が全体を押し上げ、採算の合わない層への投資が続きます
求人票にこの語がある場合に読み取れること
顧客を単発の取引ではなく、続く関係として見ている組織だと読み取れます。カスタマーサクセスやプロダクトの求人でLTVに触れている場合、評価の対象が獲得数だけではないと考えられます。
読み取れないのは、何を差し引いた金額で計算しているかです。面接では、LTVの計算式、継続期間の根拠、セグメント別に分けているかを聞きます。式が出てこない場合、その語は方針の表明であって指標として運用されていない可能性があります。
自社側では、求人票にLTVを書く前に、何を差し引いた金額なのかを社内で1つに決めておきます。営業とカスタマーサクセスで別の値が出ると、候補者に説明する数字が面談ごとに変わります。
隣接手法との違い
| 指標 | 中心にあるもの | LTVとの違い |
|---|---|---|
| ARPU | 登録者1人あたりの平均収益 | ある時点の単価。継続期間を含まない |
| CAC | 顧客1件の獲得費用 | 払う側の金額。LTVは受け取る側 |
| チャーンレート | 一定期間に失う顧客や収益の割合 | LTVの継続期間を決める入力値にあたる |
関連キーワード
純利益 / 継続期間 / セグメント / ユニットエコノミクス / カスタマーサクセス / 現在価値 / 直接マーケティング