ARR

えーあーるあーる/年間経常収益/Annual Recurring Revenue

登場(海外)
2008
更新
2026-09-02

一言でいうと

契約が続く限り毎年入る売上を年額に直して合計した金額で、一度きりの収入を除いた事業の継続的な規模を表します。

提唱者と登場年

特定の提唱者はいません。サブスクリプション型の事業が広がるなかで使われ始めた語で、初出を示す一次資料は見あたりません。上の2008年は、この指標を経営の中心に据えた文書が確認できる時期を指します。

その文書がBessemer Venture Partnersの「10 laws of cloud」です。2008年に初版が出て、以後も改訂が続いています。現行版は、契約済みでまだ稼働していない分を含むCARR(Committed ARR)を、クラウド事業が監視すべき最も重要な指標だとしています。

背景にあるのは売り方の変化です。ソフトウェアを買い切りで売っていた時代は、売上は売れた年に立ちました。月額や年額で貸す形に変わると、その年の受注額よりも、来年以降も入り続ける金額のほうが事業の実力を表します。

何を解決するか

解決したいのは、受注額と会計上の売上のどちらを見ても、事業がどれだけの規模で続いているかがつかめないことです。受注額には初期費用や個別開発の代金が混ざり、来年も入る保証がありません。会計上の売上は提供済みの分だけを計上するため、契約が積み上がっている実感とずれます。

ARRは、いまある契約がそのまま続いた場合に1年で入る金額だけを取り出します。前提として、契約が期間で管理され、更新と解約を追える状態が必要です。個別条件の契約書がスプレッドシートに散らばっている段階では、集計そのものが成立しません。

実際の進み方

まず定義を文書にします。何を含めて何を除くかを決めないと、部署ごとに違う数字が出ます。

次に対象の契約を洗い出し、初期費用・導入支援・ハードウェアのような繰り返さない収入を除きます。月額契約は12倍し、複数年契約は年額に割り戻します。

そのうえで、増減を新規・拡大・縮小・解約の4つに分けて毎月更新します。合計額だけを追っていると、新規で積んだ分を解約が相殺している状態に気づけません。

導入でよくある失敗

  • 受注額と売上を同じものとして扱う。Andreessen Horowitzは「16 Startup Metrics」で、この2つを入れ替えて使うのがよくある誤りだと指摘しています
  • ある1か月の受注総額を12倍してARRと呼ぶ。一度きりの費用まで12回入る前提になります
  • 設定費用・導入作業・コンサルティングの代金を含める。翌年は発生しない収入が、続く収入として数えられます

求人票にこの語がある場合に読み取れること

事業フェーズと資金調達の状況が読み取れます。金額を書く企業の多くは、投資家への説明で使っている数字をそのまま採用広報にも出しています。

読み取れないのは定義です。一時収益を除いているか、契約済みで未稼働の分を含めているかは、書かれていないのが普通です。面接では、その金額が何を含むのか、直近1年の解約と縮小がどれくらいかを聞くと、事業の実像に近づきます。

自社側では、求人票にARRを書く前に定義を社内で揃えます。経営とプロダクトと現場で違う数字が出ると、候補者はそこで疑問を持ちます。

隣接手法との違い

指標中心にあるものARRとの違い
MRR月あたりの経常収益見る期間の単位が違う。月額契約が中心ならMRRのほうが変化を早く拾える
受注額(Bookings)契約時点の総額一時費用を含み、期間で割り戻さない
売上高(Revenue)会計基準で認識した金額前受した契約分もARRには数えるが、売上は提供が済んだ分だけ立つ

関連キーワード

CARR / 経常収益 / 拡大収益 / 解約 / 前受金 / 更新率 / サブスクリプション

出典