職務経歴書の在籍期間の読み方|勤続年数と短期離職の見方
職務経歴書の在籍期間を、勤続年数・短期離職・転職回数・離職期間の4つの観点で読む方法を整理します。期間の長さで合否を決めずに、在籍中の役割の変化と、書類で分からないことを面接で確認する手順を、エンジニア採用の経歴の型ごとに紹介します。
職務経歴書を読むとき、最初に目に入るのが在籍期間です。「1社あたり2年未満が続いている」「直近の会社を半年で辞めている」といった並びを見て、書類の段階で見送りを決めてしまうことは少なくありません。
ただ、エンジニアの経歴では、在籍期間の長さと仕事の中身が一致しないことがよくあります。受託開発の会社で3年在籍していても、その間に5つのプロジェクトで役割が変わっている人もいれば、自社サービスの会社に1年半いて、立ち上げから運用まで一通りを担った人もいます。
在籍期間は、合否を決める基準として使うより、面接で何を確認するかを決める材料として使うほうが、判断がぶれにくくなります。この記事では、在籍期間を勤続年数・短期離職・転職回数・離職期間の4つの観点に分けて、書類で読めることと読めないことを整理します。そのうえで、エンジニアに多い経歴の型ごとの読み方、書類選考の基準の書き方、面接で確認する事項への落とし方を紹介します。
職務経歴書の在籍期間からは何が読めるのか
在籍期間から読めるのは「その会社に、いつからいつまで籍があったか」という事実だけです。辞めた理由、在籍中に担った役割、成果のどれも、期間の数字からは分かりません。
まずは4つの観点が、それぞれ何を数えているのかを分けておきます。
観点 | 数えているもの | 書類で読めること | 書類で読めないこと |
|---|---|---|---|
1社に籍があった年数 | 各社の在籍の長さ | 在籍中に役割が変わったか | |
短い期間で退職した回数 | 短い在籍がどこにあるか | 辞めた理由・本人の意思か | |
勤務先が変わった回数 | 社数の多さ | 転籍・合併など本人の転職でない変更 | |
籍がなかった期間 | 空白がいつ、どのくらいか | 空白の間に何をしていたか |
採用では、勤続年数と職種ごとの経験年数を混同しやすい点に注意が要ります。勤続年数は会社単位で数える値で、経験年数は職種単位で数える値です。同じ会社でバックエンドからSRE(サイト信頼性エンジニア。サービスを止めずに運用する仕組みを作る職種)に移った人なら、勤続年数は1本でも、職種ごとの経験年数は2本に分かれます。
勤続年数の数え方
勤続年数は、一般に入社日から退職日(在籍中なら現在)までの期間で算出します。職務経歴書では「2021年4月〜2024年3月」のように月単位で書かれることが多いので、採用の判断ではこの記載をそのまま使えば足ります。
社内の制度で使う勤続年数は、書類選考で読む在籍期間と算出方法が異なる場合があります。退職金や有給休暇の付与では、休職期間を含めるか、1年未満の端数をどう扱うかを会社ごとの規程で決めています。書類選考で必要なのは制度上の年数ではなく、本人がその会社で働いていた期間なので、規程の数え方に合わせる必要はありません。
平均勤続年数と比べる意味は小さい
厚生労働省の令和7年賃金構造基本統計調査では、一般労働者の平均勤続年数は男女計で12.7年です。
ただ、この値は平均年齢44.4歳の、すべての産業・職種を含む数字です。30歳前後のエンジニアの経歴をこの平均と並べて「短い」と判断しても、比較の前提が揃っていません。
短期離職は何年からと考えればよいか
短期離職に法令上の定義はなく、1年から3年を目安に見られることが多い言葉です。何年未満を短期とするかを社内で設定しておくと、担当者のあいだで書類の読み方を統一できます。
新卒で入社した会社については、厚生労働省の集計で、2022年3月に大学を卒業して就職した人のうち33.8%が3年以内に離職しています。1社目を3年未満で辞めていること自体は、珍しい経歴ではありません。
設定した年数を見送りの基準として機械的に使うと、要件に合う候補者まで外すことになります。たとえば「短期離職が2回ある」経歴でも、面接で話を聞くと、1社目は事業の撤退、2社目は入社後に職種が変わったことが理由だった、ということがあります。
短い在籍を見つけたら、見送りの理由にする前に、次の3つを書類で確認すると判断がぶれにくくなります。
短い在籍が直近に集中しているか、過去に一度だけか
短い在籍の会社で、何を担っていたかが書かれているか
前後の会社で、役割や技術の幅が広がっているか
3つ目が確認できる経歴は、在籍が短くても仕事の幅が広がっている可能性があります。逆に、在籍が長くても同じ役割が続いている経歴は、自社の求める役割に届いているかを別途確認する必要があります。
エンジニアの経歴のタイプごとに読むときの注意点
エンジニアの職務経歴書には、在籍期間だけを見ると誤読しやすい型がいくつかあります。代表的な4つの型と、読むときに見る箇所を整理します。
受託開発・SESから自社開発に移った経歴
受託開発やSES(システムエンジニアリングサービス。エンジニアが顧客企業に常駐して開発を支援する契約形態)の会社では、1社の在籍の中で複数のプロジェクトを経験します。在籍期間は1本でも、職務経歴書の中ではプロジェクトごとに期間・役割・技術が書かれていることが多いはずです。
この型では、会社単位の在籍期間ではなく、プロジェクト単位で「どの工程を担ったか」を読みます。後半のプロジェクトほど設計や要件定義に関わっているなら、在籍中に役割が広がっています。自社開発の会社に移った理由は、面接で確認すると、候補者が次の会社で何をしたいかを知る手がかりになります。
業務委託・フリーランスの期間がある経歴
業務委託で働いていた期間は、3か月や半年といった短い契約が並んで見えることがあります。これは雇用の在籍ではなく契約の単位なので、短期離職とは分けて読みます。
見る箇所は、同じ取引先との契約が更新されているか、複数の取引先を並行していたかです。同じ相手との契約が1年以上続いているなら、その相手から継続して仕事を任されていたことが分かります。通常3ヶ月単位の契約更新が主流の業務委託契約のなかで、更新が見受けられない場合はチェックしておくことを推奨いたします。
合併・転籍・事業の撤退で社名が変わった経歴
会社の合併や子会社への転籍、事業の撤退にともなう異動では、本人が転職していなくても、職務経歴書に書かれる社名は変わります。転職回数を集計するときにこの変更まで1回と数えると、実際より転職が多い経歴に見えます。
職務経歴書に「〇〇社に吸収合併」「グループ会社へ転籍」と書かれていれば、その変更は転職回数から外して読みます。書かれていない場合は、同じ時期に社名だけが変わっていないかを確認し、面接で聞く事項に入れておきます。
離職期間がある経歴
離職期間には、転職活動のほかに、育児・介護・療養・学び直し・個人での開発など、さまざまな事情が含まれます。書類には事情が書かれないことも多く、空白の長さだけでは何も判断できません。
離職期間がある場合は、その期間を理由に見送るのではなく、期間の前後で経験がつながっているかを読みます。育児・介護・療養といった家庭や健康に関わる事情は、こちらから尋ねず、判断の材料にもしません。面接で確認するのは、入社後の勤務時間や働き方の希望など、仕事に関わる条件にとどめます。本人が事情を話した場合も、合否には用いません。
書類選考の基準を在籍期間でどう書くか
在籍期間を見送りの基準に入れるかどうかは、採用要件を決める段階で、関係者全員と合意しておくのが確実です。書類選考の担当者ごとに「短い」の線が違うと、同じ経歴でも通過と見送りが分かれます。
AIで書類を一次判定する場合も、判定の指示に「在籍2年未満は不可」と書くと、AIはその条件を機械的に当てはめます。在籍期間は判定の理由の中で事実として書かせ、最終的な判断は人が面接の結果と合わせて行う形にしておくと、外さなくてよい候補者を外す誤りを減らせます。
面接では在籍期間の何を確認するか
書類で判断を保留した事項は、面接で事実として確認します。聞く内容は、辞めた理由そのものより、在籍中に担ったことと、次の会社を選んだ理由に寄せると、候補者も答えやすくなります。
各社で、入社時と退職時で担っていた役割がどう変わったか
短い在籍の会社では、入社前に聞いていた仕事と実際の仕事に違いがあったか
今回の転職で、次の会社に何を求めているか
2つ目の質問では、候補者を責める聞き方にならない言葉を選びます。入社前の説明と実際の仕事の違いは、候補者だけの問題ではなく、採用する側の説明が足りなかったことも原因になるからです。自社の選考で同じことを起こさないためにも、面接では仕事内容を具体的に伝えておくと、入社後の食い違いを減らせます。
書類選考の基準のうち、在籍期間に関わる行を「見送り」から「面接での確認事項」に書き換えておくと、同じ経歴を誰が読んでも判断が分かれにくくなるように思います。
永井涼平
HRdev代表
レバレジーズ、クラウドワークス等を経て2021年にHRdev創業。18年以上エンジニア採用の最前線に立ち、ログラス・MFS・SALESCORE等の支援実績を持つ。
