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候補者対応と個人情報の線引き|採用業務のAI活用(第6部)

返信が届いてからの日程調整、質問への回答、面接の記録、見送りの連絡で、AIに任せられる範囲を解説します。候補者の個人情報をどこまでAIに渡してよいかの線引きもまとめています。

永井涼平HRdev代表

この記事は、シリーズ「採用業務のAI活用」(全8部)の第6部です。各部の一覧はシリーズの目次にあります。内容は、HRdevが採用支援の実務で培った知見をもとにした使い方の例です。

返信が来たら、候補者との具体的なやり取りが始まります。日程を調整し、質問に答え、面接の記録を残し、ときには見送りを伝えます。1件ごとに事情が違うため決まった形にしにくい作業ですが、実際には繰り返し出てくる形があります。第6部では、その形と、個人情報をどこまでAIに渡してよいかの線引きを扱います。

図1 候補者対応の流れとAIの担当

図1 候補者対応の流れとAIの担当

返信の受け取りから見送りの連絡まで、候補者対応の作業を順に並べ、AIが担当する部分と人が担当する部分を示しています。候補者から返信が届いたら、返信日時を管理シートに記録し、日程の相談、質問、辞退のどれにあたるかをAIに分類させます。どの対応に進むかは、分類した結果を見て人が決定します。各場面の使い方は、この部の2章で説明します。

1. 候補者対応でAIを使える場面の全体像

返信メールづくりは作成タイプ(文章をつくる作業)、面接メモの整理は整理タイプ(まとめる作業)です。AIで下書きを用意しておくと、候補者への返信をその日のうちに送りやすくなります。

第2部の3つのタイプのうち、候補者対応には作成タイプと整理タイプが混ざっています。どちらも、候補者本人に届くか、選考の判断材料になるかのどちらかです。間違えたときの影響が大きいため、運用の初めは、送信と最終的な判断を人が行います。AIに任せる前に確かめることは6章で扱います。

候補者は複数の会社と並行して選考を進めているため、こちらの返信が当日か翌日かで、面談につながる割合に差が出ます。下書きが数分で用意されていれば、担当者はその日のうちに確認して送ることができます。

2. 場面ごとのAIの使い方

候補者に送るメールの下書きをAIに作らせるときは、事前に読み込ませた情報(求人票、会社紹介資料、日程調整の決まりなど)の範囲だけで書かせます。AIが資料にないことを答えると、候補者と会社のあいだに大きな認識の食い違いが生まれます。

2-1 日程調整のメール

日程調整URL(候補者が空いている枠を選んで予約できるページのリンク)を用意できる場合は、URLを主体にして、候補者に都合のよい枠を選んでもらいます。自社の都合でURLを出せない場合は、10営業日ほどの範囲から候補日時を選んで提示することを推奨します。AIは下書きまでを作り、送信は人が行います。

日程調整のメールには、決まった書き方があります。AIに書かせる前に、この書き方を指示として渡しておきます。

書く内容

書き方

日程調整URL

用意できる場合は、URLを主体にして候補者に枠を選んでもらいます

候補日時(URLを出せない場合)

10営業日ほどの範囲から候補を選んで示します

面談の条件

「所要時間60分/オンライン」のように1行で書きます

同じ日の複数の枠

1行にまとめ、「14時〜17時のあいだ」のように時間帯でも示します

都合が合わない場合

候補者の都合のよい日時を尋ね、決まったあとに会議のURLを送る流れを書きます

候補者は複数の会社の日程を並べて調整しているため、条件は1行で取り出せる形にします。候補日の範囲が狭いと、その期間が埋まっている候補者とは、やり取りが1往復増えます。

AIが作るのは下書きまでにし、人が確認して送る運用から始めます。宛先の間違いは取り返しがつかず、候補者との信頼を損なうためです。送信までAIに任せる場合の考え方は6章で説明します。

2-2 候補者からの質問への回答

AIには、渡した資料の範囲だけで答えさせます。受けた質問を記録し、求人票の元になる原稿(媒体ごとに書き分ける前のもの。第3部)に反映します。

候補者からの質問には、AIが回答の下書きを作ることができます。求人票、会社紹介資料、過去の回答例を材料として渡し、その範囲だけで答えさせます。材料に答えがない質問には、答えを作らせず「資料に記載がありません」と返させてください。推測で答えると、あとで面接官や人事の説明と食い違います。

候補者の質問の記録と求人票への反映

候補者からの質問を並べると、求人票に書かれていないことが見えてきます。同じ質問が3人から来たら、求人票の説明が足りないのか、見つけにくいのかを確かめて修正します。

質問を管理シートに記録し、月に一度まとめて分類します。分類はAIに任せられます。件数は関数で集計します。多かった質問は、第3部の工程3で作成した元原稿に追記し、次の募集の質問票(工程2)にも反映します。この流れを作っておくと、求人票は運用を続けるうちに充実していきます。

たとえば

「リモートワークは週に何日までできますか」という質問が来て、資料に記載がない場合、AIの下書きは「資料に記載がありません」とします。担当者は候補者に「担当部署に確認し、〇日までにご連絡します」と返し、確認先と回答期限を管理シートに記録します。

2-3 面接の記録と面接メモの整理

要約ツールを使うと面接の記録を自動で作成できますが、要約から落ちる情報があります。

要約から落ちる発言者と前置き

要約では、「誰が言ったか」と「どんな前置きや条件が付いていたか」が残りません。HRdevでも、前置きの落ちた要約の一行を根拠にした報告が、文字起こしの原文とは逆の趣旨になっていた事例があります(経緯と防ぐための指示は第8部3章)。

要約や文字起こしは誤ることがあります。内容に違和感があれば、その場で文字起こしの原文や録音、出席者に確認するのを基本にします。とくに言い切った内容、数字、誰の発言かは、報告や判断に使う前に原文で確認します。

面接メモの整理では、評価項目ごとに該当する発言を原文から抜き出すところまでをAIに任せます。抜き出した箇所には、発言の時刻を残します。評価そのものは面接官が行います。面接官は、AIの整理を見る前に自分の評価と根拠を記録します。AIの整理に同意するだけの運用にすると、面接官が感じた違和感が記録から消えてしまいます。

評価項目

面接官の質問

候補者の発言と時刻

確認できなかったこと

設計の判断

移行の方式をどう選びましたか

「停止時間を30分以内にするため、段階的に切り替える方式を選びました」(12:40)

切り替えたあとの検証の方法

該当する発言がない評価項目は「確認できる発言なし」と書き、能力が足りないとは扱いません。次の面接で確かめることとして残します。

この章のまとめ

AIの要約や文字起こしは誤ることがあるため、違和感があればすぐに、文字起こしの原文や録音、出席者に事実を確認します。報告や判断に使う数字と発言は、原文で確かめてから使います。

2-4 選考通過の連絡

選考通過の連絡を受けて、候補者は次の選考へ進むかを判断します。通過の事実、次の選考の内容、日程の候補を、確かめた内容だけで伝えます。

候補者の意向は、通過の連絡を受けたときに動きやすくなります。連絡が遅れたり、次の選考の内容が分からなかったりすると、並行して進めている他社の選考に気持ちが移ることがあります。AIには下書きまでを任せ、人が内容を確認して、できるだけ早く送ります。

書く内容

書き方

通過の事実

どの選考を通過したかを最初に書きます

次の選考の内容

面接か面談か、担当者、所要時間、オンラインか対面か、準備してほしいもの

日程の候補

2-1と同じく、日程調整URLを主体にし、出せない場合は10営業日ほどの範囲から候補日時を示します

評価された点

社内で伝えると決めた場合に、面接メモの原文にある事実に沿って書きます

評価された点の下書きは、2-3で整理した面接メモからAIに作らせることができます。書く内容はメモの原文にある事実に限り、伝えるかどうかと表現は人が決定します。

2-5 見送りの連絡とテンプレートの使い方

見送りの連絡は決まった言い回しが大半を占めるため、テンプレートが適しています。面接まで進んだ方や、別のポジションを案内したい方のように個別の事情があるときは、AIに下書きを作らせ、人が確認して送ります。

見送りの理由は、社内で伝えると決めた場合を除き、文面に書きません。理由を伝えるかどうかを、AIの判断で決めさせないでください。第4部で作った判定の理由は、社内の判断にだけ使い、候補者本人には渡しません。

選考の途中まで進み、時期やポジションが合えば一緒に働きたい方には、その旨を連絡に含めます。そのうえで、中長期で連絡を続ける候補者として、管理シートの「中長期の連絡」の列に記録します。

この章のまとめ

見送りの連絡は、テンプレートをもとに送ることを推奨します。個別の事情がある場合に限り、AIに下書きを作らせます。見送りの理由は、社内で伝えると決めた場合を除き書きません。

3. 候補者の個人情報の扱い

図2 AIに渡す情報と記録や共有に書き出す情報の線引き

図2 AIに渡す情報と記録や共有に書き出す情報の線引き

候補者の個人情報は、条件を確認したうえでAIに渡し、書き出す範囲は見る人と場所で決定します。

候補者対応では、氏名、連絡先、職務経歴、面接での発言といった情報を扱います。AIをどこまで使ってよいかは、情報の種類ごとに、AIに渡してよいかと、記録や共有に書き出してよいかを分けて判断します。

情報の種類

AIに渡すか

報告や記録に書き出すか

候補者の個人情報

条件を確認して渡す

見る人と場所で範囲を決める

社外秘の情報

条件を確認して渡す

共有してよい範囲を確認する

AIに渡す範囲と記録や共有に書き出す範囲

候補者の情報をAIに渡すかどうかと、報告や社内の記録にどこまで書き出すかは、別々に判断します。AIに渡す前には、サービスの契約と設定、社内の取り扱いルール、候補者に伝えている利用目的を確認し、作業に必要な範囲だけを渡します(第1部2章)。

記録や共有に書き出すときは、見る人と場所に合わせて範囲を決定します。選考の担当者どうしで議論する場面では、氏名があったほうが話を進めやすくなります。関係者の多いチャンネルや社外に出す資料では、候補者IDで呼ぶほうが安全です。情報が残る場所と見る人が増えるほど、意図しない共有が起きやすくなります。

面接の記録を扱う前に確認すること

面接を録音し、その文字起こしをAIで処理する運用が広がっています。始める前に、候補者に何をどう伝えているかを確認してください。録音すること、その内容を選考の記録として残すこと、外部のサービスで処理することは、それぞれ別の事柄です。案内に「録音します」としか書いていないのに、文字起こしを外部のサービスで処理するところまで進めると、候補者が想定していない範囲まで情報が渡ります。

面接官が個人的に使っているツールが、いつの間にか記録の置き場所になっている場合もあります。記録がどのサービスを通ってどこに残るのかを、運用の初めに一度整理してください。

運用の初めに決めておく記録の項目

候補者の情報をいつまで、どこに、誰が見られる形で残すかは、会社ごとに決める事柄です。社内の規程や候補者に伝えている利用目的に照らして、次の項目を運用の初めに決定しておきます。決めた内容は1枚にまとめておくと、社内の確認や監査の資料にも使うことができます。

決める項目

決める内容

保存先

管理シート、採用管理システム、AIの会話、添付した資料、録音と文字起こしのそれぞれを、どこに保存するか

閲覧できる人

保存先ごとに、見てよい人と編集してよい人

保存期間

応募した方と、スカウトの対象として集めただけの方で、それぞれいつまで残すか

期間が過ぎたあとの扱い

行ごと削除するか、個人を特定できる列だけを空にして件数の集計用に残すか

削除の担当と記録

誰が削除し、いつ何を削除したかをどこに記録するか。すぐに削除できない保存先の扱い

この章のまとめ

候補者の個人情報をAIに渡してよいかと、報告や社内の記録にどこまで書き出してよいかは、別々に判断します。情報が残る場所と見る人が増えるほど、意図しない共有が起きやすくなるためです。

4. 候補者対応の管理シートの列

候補者から連絡が来てから、自社が最初に返信するまでの時間を列に記録します。候補者の返信率や選考の通過率と違い、自社の返信の速さは自社の運用だけで改善できます。

列の種類は、第2部と同じ呼び方にそろえています。

列

種類

中身

候補者ID

目印

第4部から同じ番号を使います

候補者からの返信日時

実績

候補者から返信が来た日時

こちらの返信日時

実績

こちらが最初に返信した日時

返信までの時間

自動計算

上の2つの列の差を関数で計算します。夜間や休日を含めるかは先に決定します

受けた質問

材料

候補者からの質問を原文のまま記録します

質問の分類

AIの答え

AIが分類します。件数は関数で集計します

面談の日程が決まった日

実績

日程が確定した日

選考の段階

人の決定

人が更新します

中長期の連絡

人の決定

今後も連絡を続ける方かどうかと、次に連絡する時期

5. 候補者対応での進め方Aと進め方B

進め方A(スプレッドシートとGemini)

1件ずつ確かめながら進めたい場合。スプレッドシートのAI関数(セルの中からAIに頼む機能)と、Geminiのスキル(指示と資料を保存して繰り返し呼び出せる機能)を使います。会社のGoogle Workspaceのアカウントでスキルがまだ使えない場合は、同じ指示をGemsに保存して使います(第2部6章)。

日程調整と質問への回答には、それぞれ別のスキルを用意します。指示どうしが混ざらないよう、チャットも分けて呼び出します。日程調整のスキルには書き方の決まりと日程調整URLを登録します。URLを出せない場合は、呼び出すときに確認済みの空き日時を渡します。質問回答のスキルには、求人票と会社紹介資料を入れておきます。資料にない質問には答えないという指示を、両方に入れます。

質問の分類は、管理シートの列に対してAI関数で行います。分類の項目は先に決めて渡し、AIに新しい分類を作らせないでください。

進め方B(Claude CodeとCodex)

件数が多く、手順の決まった作業をまとめて任せたい場合。Claude CodeやCodex(パソコン上のファイルやスプレッドシートの操作から資料の作成まで、手順ごとまとめて任せられるAIエージェント)を使います。

面接の文字起こしから、評価項目ごとに該当する発言を抜き出す処理に向いています。結果には原文のどこから取ったかを必ず含め、面接官が元の発言を確かめられるようにします。

外部のサービスとつなぐときは、そこに個人情報が渡ることを先に確認してください。つなぐ先が増えるほど、候補者の情報が残る場所を把握しにくくなります。

この章のまとめ

進め方A(スプレッドシートとGeminiで1件ずつ進める)では、日程調整と質問への回答で、Geminiのスキルを分けます。進め方B(Claude CodeやCodexでまとめて処理する)では、面接の文字起こしから評価項目ごとの発言を抜き出します。

6. 送信・判断・評価をAIに任せる前に確かめること

メールの送信、見送りの判断、面接の評価をAIに任せたい場合は、誤送信をはじめとした起こりうる課題を列挙し、それぞれへの対策を検証してから進めることを推奨します。

この3つは、取り消しがきかないか、人が責任を持つべき判断を含みます。AIに任せること自体を禁じるものではありません。任せる場合は、たとえば送信なら宛先の取り違え、同じ方への二重送信、辞退した方への送信のように起こりうる課題を先に列挙します。そのうえで、それぞれを防ぐ確認を用意し、少ない件数で検証してから対象を広げます。

シリーズ「採用業務のAI活用」の構成

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永井涼平

HRdev代表

レバレジーズ、クラウドワークス等を経て2021年にHRdev創業。18年以上エンジニア採用の最前線に立ち、ログラス・MFS・SALESCORE等の支援実績を持つ。

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