ユニットエコノミクス
(ゆにっとえこのみくす/Unit Economics)
- 普及(海外)
- 2012年
- 更新
- 2026-09-16
一言でいうと
顧客1件あたりの収益と費用を取り出し、事業が拡大するほど利益が出る構造かどうかを確かめる見方です。
提唱者と登場年
David Skok は2012年に「SaaS Metrics 2.0」を公開し、この考え方を SaaS の文脈へ広めました。契約が続く事業では損益計算書の単年度の赤字が投資の結果である場合があり、全体の損益だけでは事業の成否を判断できないという問題を扱いました。顧客1件単位で整理すると、獲得にかけた費用を回収できているかどうかが分かります。
Andreessen Horowitz は2015年の「16 Startup Metrics」で、LTV を売上のまま置く誤りを挙げ、顧客への提供に伴う原価を差し引いた利益を基礎にし、算入範囲を明示するべきだとしています。同じ用語でも計算方法が揃っていない点を、投資家の側から指摘した文書です。
何を解決するか
拡大の判断ができません。赤字のまま広告を増やす会社と、赤字のまま広告を増やしてはいけない会社を、全社の損益では区別できないためです。
ユニットエコノミクスは、この判断を1件あたりに縮めます。1件あたりで利益が出ていて、獲得費用と原価の構造が大きく変わらない範囲であれば、件数を増やす投資を検討する材料になります。1件あたりで赤字なら、件数を増やすほど損失が積み上がります。
実際の進み方
まず「1単位」を何に置くかを決めます。SaaS では1契約または1アカウント、消費者向けサービスでは1ユーザー、店舗事業では1店舗を単位に置きます。
次に、その単位の LTV と CAC を計算します。David Skok は2012年の記事で、SaaS の目安として LTV ÷ CAC が3倍、CAC を回収する期間が12か月以内という水準を示しました。業種と成長段階によって適切な水準は異なります。数字を単独で判断せず、資金の残り期間とあわせて確認してください。
原価の範囲も先に決めます。サポート費用やインフラ費用を差し引かないと、LTV は実態より大きく出ます。
導入でよくある失敗
- LTV を売上で計算し、原価とサポート費用を差し引かない
- 解約の実績が薄い時期に、継続期間を1つの値に丸めて計算する
- 全社平均だけを見る。顧客区分ごとに構造が違う場合、平均は実態を示しません
求人票にこの語がある場合に読み取れること
投資家への説明が必要な段階の会社で使われます。プロダクトマネージャーや事業企画の求人にこの語がある場合、機能の提案だけでなく、収益構造の数字で説明することを求められると読み取れます。面接では、どの単位で、どの原価まで含めて計算しているかを確認してください。
隣接手法との違い
| 用語 | 指すもの | ユニットエコノミクスとの違い |
|---|---|---|
| LTV | 顧客1件あたりの生涯利益 | 収益側の指標。ユニットエコノミクスは費用と並べて判断する |
| CAC | 顧客1件あたりの獲得費用 | 費用側の指標。単独では成否を判断できない |
| EBITDA | 全社の利益水準 | 全体の集計。ユニットエコノミクスは1件あたりの構造 |