採用要件定義

(さいようようけんていぎ/Hiring Requirements Definition)

一言でいうと

採用したい人物像を、経験と能力の水準まで具体化して社内で合意する工程です。

もう少し詳しく

要件が曖昧なまま走り出すと、選考のたびに判断がぶれます。書類で通した候補者が面接で見送りになる状態が続くとき、原因はほぼここにあります。合意されていたつもりの要件が、人事と現場で違う内容だったということです。

求人票に載せる要件と、書類選考で使う足切り基準は別物です。前者は応募を促すためのもので、幅を持たせます。後者は社内の判断を揃えるためのもので、境界を明示します。同じ文書で兼ねると、幅に寄せれば判断がぶれ、境界に寄せれば応募が減ります。両立しません。

採用要件は、決めた時点で完成するものではなく、選考の全段で検証する基準です。どの項目を書類で確かめ、どの項目を面接や実技課題で確かめるかを先に割り付け、オファーを出すまでに確認を終えてください。オファーの場では、選考の結果を前提に、役割と待遇と入社条件の認識をすり合わせます。割り付けをしないまま運用すると、同じ項目を全段で繰り返し確認したり、どの段でも確認されない項目が残ったりします。

実務でどう使うか

現場と話すときは、理想の人物像ではなく、入社後半年で何を任せるかから聞いてください。任せる仕事が具体化すると、必要な経験が自然に絞られます。

決めた要件は必須と歓迎に分けます。必須要件は3つ程度までが目安で、増えるほど該当者が減ります。目安を超える場合は、媒体で該当人数を数えて判断してください。要件を確定する前に数えれば、実現可能性がその場でわかります。

必須と歓迎の線引きは、満たさない場合に採用できるかどうかで決めます。歓迎要件は評価を上げる材料であって、無いことを理由に見送る材料ではありません。見送りの条件を置きたいなら、職務との関連があり書類や選考で確認できる事項に限って、ノックアウト条件として別に明示してください。書類から推測した事情を条件にはしません。

スカウトを送る段では、この要件をそのままは使いません。レジュメから読み取れる・判断できる要素へ蒸留したものを、スカウト要件として別に用意します。面接で確かめるはずの項目を書面判定に持ち込むと、通過率が実態より低く出ます。

よくある失敗

  • すでに社内にある能力を重ねて求めてしまう。現在のメンバーの延長で要件を書いた結果です
  • 必須要件を積み上げる。ひとつ増えるごとに対象者が減り、母集団が消えます
  • 技術名を並べて終える。同じ言語でも扱う規模と役割で経験の中身が変わります

混同されやすい用語

用語指すものこの語との違い
ジョブディスクリプション職務内容を記述した文書要件定義の結果を対外向けに書いた成果物
ペルソナ設計候補者像を人物として描く手法要件を候補者目線に翻訳する作業
評価基準面接で合否を判断する基準要件を選考の各段階に落とし込んだもの
スカウト要件書面から判断できる形に蒸留した要件送信対象を決める基準。検証の範囲が書面に限られる
ノックアウト条件該当したら見送ると決めた条件除外の基準。要件の充足度を測るものではない

HRdevの現場から

上流の設計を飛ばして運用だけを引き受けると、途中で必ず戻ることになります。要件の合意ができていない状態でスカウトを送っても、返信した候補者を現場が見送り続ける結果になるためです。運用の前に要件を固める工程を必ず置いています。