採用実務
労働条件明示
(ろうどうじょうけんめいじ/Working Conditions Disclosure)
一言でいうと
募集から契約の締結までの各段階で、業務内容や賃金などの労働条件を示すことを求める法令上の義務です。
もう少し詳しく
義務が生じる場面は三つあります。募集の段階では、職業安定法第五条の三第一項が、労働者の募集を行う者に対し、応募しようとする者へ従事すべき業務の内容、賃金、労働時間その他の労働条件を明示することを求めています。同法施行規則は、書面等の方法で明示すべき事項を列挙しています。業務の内容と就業の場所は、いずれも変更の範囲を含めて示すことが対象です。有期労働契約では、更新の基準と、通算契約期間または更新回数の上限も含まれます。求人票や募集要項がこの対象です。
二つ目が、労働契約を締結しようとする段階で、募集時に明示した内容を変更する場合です。同条第三項は、変更する内容などを契約の相手方となろうとする者へ明示することを義務づけています。選考の途中で条件が動いたときに、伝えるかどうかを運用の判断で決めてよい話ではありません。
三つ目が契約の締結時です。労働基準法第十五条は、賃金や労働時間などの労働条件を明示することを使用者に義務づけています。明示すべき事項は労働基準法施行規則第五条に列挙され、募集段階と同じく、就業の場所と従事すべき業務は変更の範囲を含めて示します。明示の方法は書面の交付が原則です。労働者が希望した場合に限り、ファクシミリまたは電子メール等によることができ、電子メール等は受け取った側が出力して書面を作成できるものに限られます。同条は、明示された労働条件が事実と相違する場合に労働者が即時に労働契約を解除できることも定めています。
この三つとは別に、掲載中の求人情報そのものにも要求があります。職業安定法第五条の四第二項は、労働者の募集を行う者に対し、広告等で提供する募集情報を正確かつ最新の内容に保つことを求めており、同条第一項は虚偽の表示と誤解を生じさせる表示を禁じています。
実務でどう使うか
求人票を作る段階から、記載する条件の根拠を人事側で押さえておきます。媒体ごとに入力欄が違うため、同じポジションでも記載が変わり、そこから食い違いが生まれます。条件の正本を1か所で管理し、各媒体へ反映する形にしてください。
選考の途中で条件が変わったときは、その時点で候補者に伝えます。オファー面談で初めて相違が判明する状態は、法令上の問題に加えて承諾率にも影響します。個別の書式や運用の可否は社会保険労務士などの専門家に確認したうえで進めてください。
よくある失敗
- 就業の場所と業務の変更の範囲を書かないまま通知書を作る。施行規則が求める記載を欠いた状態になります
- オファーの段階で条件の食い違いが出る。募集時の記載を更新しないまま選考を進めたためです
- 媒体ごとの記載を放置する。古い条件が残り、募集時の明示と食い違います
混同されやすい用語
| 用語 | 指すもの | この語との違い |
|---|---|---|
| ジョブディスクリプション | 職務内容を記述した文書 | 募集のための文書。明示は法令上の要求 |
| 雇用契約書 | 双方が署名して交わす契約書 | 契約の成立。明示は条件を示す行為 |
| 就業規則 | 職場の規律や労働条件の統一的な定め | 事業場ごとの規程 |
HRdevの現場から
複数の媒体に同じポジションを掲載している場合は、条件の記載を1か所で管理し、そこから各媒体へ反映する運用を勧めています。媒体ごとに個別に直すと、必ずどこかが古いまま残ります。
関連キーワード
ジョブディスクリプション / オファー面談 / ジョブ型雇用 / 年収レンジ設計 / 技術・人文知識・国際業務