調達フェーズ
(ちょうたつふぇーず/資金調達フェーズ/調達ラウンド/Funding Stage)
- 登場(海外)
- 1995年
- 更新
- 2026-09-06
一言でいうと
スタートアップが外部資金を何段階目で受け入れたかを示す区分で、シード・シリーズA・B・Cのように呼び、事業の成熟度の目安に使われます。
提唱者と登場年
特定の提唱者はいません。シリーズA・Bという呼び名は、投資家に発行する優先株(普通株より配当や清算時の取り分が優先される株式)のシリーズをそのまま数えたものです。名づけの経緯を示す一次資料は見あたりません。
上の1995年は、資金を一度に入れず段階に分けて入れる仕組みが学術的に分析された時期を指します。Paul A. Gompersは「Optimal Investment, Monitoring, and the Staging of Venture Capital」(Journal of Finance、1995年)で794社を対象に分析しました。投資先が形のない資産を多く持つほど、投資家は1回あたりの金額を小さくし、回数を増やす傾向がありました。
何を解決するか
解決したいのは、実績のない会社の価値を一度に決められないことです。創業直後に必要な総額をまとめて入れると、投資家は結果が出る前に条件を確定させることになり、創業者は必要以上の株式を手放します。
段階に分ければ、達成した内容に応じて次の条件を決められます。投資家は続けるか止めるかを選べ、創業者は伸びた分だけ有利な条件で次を受けられます。呼び名を見れば、その会社がどこまで証明できたと主張しているかを外から粗く読めます。
前提として、段階ごとに何が証明できたら次かが置かれている必要があります。そこが曖昧なまま金額だけ積むと、区分は成熟度を表しません。
実際の進み方
プレシードとシードは製品ができる前後の段階です。作るものと売り先の仮説を確かめる資金で、人数は数名から十数名にとどまります。国内ではこの段階で優先株を発行せず、J-KISSのような有償新株予約権を使うコンバーティブル・エクイティで調達する例が多く、呼び名と株式のシリーズが一致しないことがあります。
シリーズAは、その仮説が数字で裏づいた段階です。売り方を再現できる形にすることが主題になります。採用が本格化します。ただしPMFに届く前のシリーズAも珍しくありません。
シリーズB以降は、確かめた売り方に人と広告費を積んで規模を作る段階です。組織の階層が増え、職種が細かく分かれます。呼び名はDやEへ続きますが、番号よりも直近の調達額と時期のほうが状態を表します。
導入でよくある失敗
- 番号を成熟度そのものとして扱う。同じシリーズAでも、調達額が1億円の会社と20億円の会社では組織も打ち手も違います
- 総額だけを見て時期を見ない。3年前のシリーズBで資金が尽きかけている会社と、直近のシリーズBの会社は状態が別です
- 段階を飛ばした調達を実力の証明と読む。市況が良い時期には、証明が済む前に大型の調達が成立します
求人票にこの語がある場合に読み取れること
入社後に任される範囲と、組織の作られ方が読み取れます。シード・シリーズAなら、職種の境界が曖昧で採用や基盤づくりまで関わります。シリーズB以降は役割が定まり、既存のものを引き継いで伸ばす仕事が増えます。
読み取れないのは金額の水準と、資金の残り(ランウェイ。いまの支出のまま何か月もつか)です。スピーダの速報値では2025年の国内調達総額はデットを除いて7,613億円でした。1社あたりでは平均3.1億円、中央値は前年の7,760万円から6,240万円へ下がっています。平均と中央値はラウンド別の内訳ではないので、シリーズAの相場としては読めません。調達額と時期が書かれていても、月々いくら使っているかは外から見えません。面接では、直近の調達時期と、今期の採用計画の人数と時期を聞くと状況がわかります。
自社側では、公表済みのラウンドだけを書きます。未クローズや未公表の調達は、求人票にもスカウト文にも書きません。投資契約や株主間契約の守秘義務に触れます。上場準備中なら、主幹事証券や取引所の審査で情報管理を問われます。判断に迷う個別のケースは弁護士に確認します。金額はプレスリリースの表記とそろえます。
隣接手法との違い
| 用語 | 中心にあるもの | 調達フェーズとの違い |
|---|---|---|
| PMF | 製品と市場が噛み合っているか | 事業の状態を指す。調達フェーズは資金の受け入れ回数の区分 |
| バリュエーション | 調達時に付いた企業価値 | 同じフェーズでも金額は大きく開く |
| IPO | 株式を公開して市場から調達すること | 未公開のまま続くラウンドの先にある選択肢のひとつ |
関連キーワード
プレシード / シード / シリーズA / ブリッジ / J-KISS / 優先株 / ランウェイ / バリュエーション