バーティカルSaaS

ばーてぃかるさーす/Vertical SaaS

文書で確認(海外)
2021
更新
2026-09-16

一言でいうと

特定の業界を対象に、その業界に固有の業務や商習慣へ対応する SaaS です。業種を問わず共通の業務を扱うホリゾンタル SaaS と対になります。

提唱者と登場年

業種特化のソフトウェアという分類は、SaaS より前から存在します。英語版 Wikipedia は vertical market software を、特定の業界や職種に向けて作られたソフトウェアと定義し、1990年時点で法務分野の専用システムが多数あったと記述しています。対になる horizontal market software は、文書作成や表計算のように業種を問わず使われるものを指します。

クラウドで提供される事業の分類としては、投資家の資料に現れます。Bessemer Venture Partners は2021年の「State of the Cloud」で、クラウド企業の区分の一つとして Vertical Software を掲載しています。

何を解決するか

業種を問わない製品では、その業界でしか通用しない業務に届きません。建設の工程管理、医療の保険請求、飲食の予約と在庫のように、業界ごとに固有の手順と商習慣があり、汎用の製品では設定と運用でしか埋められないためです。

バーティカル SaaS は、その手順を製品の標準機能として作り込みます。製品によっては、汎用の製品より導入時の設定が少なく済みます。ただし業務の複雑な業界では、業種特化の製品でも導入の支援と設定の作業が要ります。対象となる市場の大きさは、その業界の規模に制限されます。

実際の進み方

対象の業界と業務を絞ります。同じ業界でも、扱う工程が違えば必要な機能は別のものになるため、どの工程まで製品で担当するかを先に決めます。

次に、業界の業務を理解した人を製品側へ置きます。要件を業界の言葉で聞き取り、製品の仕様へ翻訳する役割が要ります。人の集め方は会社によって異なり、業界出身者を採用する方法や、顧客の現場で業務を学ぶ方法が採られます。

提供範囲を広げる段階では、同じ業界の隣接業務へ広げる方向と、近い構造を持つ別の業界へ広げる方向があります。前者は既存顧客あたりの取引額を、後者は対象となる顧客数を増やす狙いです。

導入でよくある失敗

  • 業界の業務を理解しないまま、汎用の製品に業界向けの名前を付けて売る
  • 顧客ごとの個別対応を積み上げ、標準機能として整理しない
  • 対象業界の規模を確かめずに、汎用製品と同じ成長の前提を置く

求人票にこの語がある場合に読み取れること

対象業界の業務知識が、選考で重く扱われる可能性があります。プロダクトマネージャーや営業の求人では、業界経験そのものを要件に置く会社と、入社後に学ぶ前提の会社があり、扱いが分かれます。求人票では、業界知識を必須とするのか加点とするのかを確認してください。エンジニアの求人では、業務知識より、複雑な業務要件をどう設計へ落としたかの経験が問われます。

隣接手法との違い

用語指すものこの語との違い
ホリゾンタルSaaS業界を横断して共通する業務領域を扱う SaaS対象の絞り方が違う。バーティカルは特定業界に固有の業務を扱う
業務パッケージ特定業務向けの既製システム提供形態を問わない。バーティカルSaaS はクラウドでの提供
SI(受託開発)顧客ごとに個別に作るシステム一社向けに作る。バーティカルSaaS は業界共通の製品

出典