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エンジニア採用を任されたら|採用施策の振り返り編

エンジニア採用を初めて担当する人事向けの連載・振り返り編。四半期ファネルの定量分析、候補者インタビュー設計、辞退者ヒアリングの標準化、声から打ち手への変換まで、採用改善サイクルの総括を解説。

四半期末に施策を振り返ろうとして、気づいたら何もまとまっていなかった。そういう経験のある人に向けて書きます。定量のファネル分析、候補者と社内へのインタビュー設計、集めた声を次期の打ち手に変換するところまで。

なぜ立ち止まって総括するのか

ここで扱うのは四半期から半期に一度立ち止まって、施策全体を総括することです。率と数字だけでなく、候補者の言葉と社内関係者の感触まで定性で集め、次の採用計画に反映します。

振り返りを省略すると、「なんとなく良かった/悪かった」で翌期の計画が立ち上がり、同じ地点で同じ躓き方をします。やっかいなのは、振り返りが片手間の運用では最初に捨てられる工程だということ。日々の選考に追われると、四半期末の総括は「来週やろう」のまま流れていきます。だからこそ、四半期に半日〜1日、年次で1〜2日の時間を、先にカレンダーで確保するのはおすすめです。

定量で振り返る

ファネルとチャネルを定量で振り返る

まず数字で何が起きたかを確認します。

見るもの

次に決めること

ファネル

エントリー→カジュアル面談→一次面接→内定→内定承諾の各ステップの発生数とその歩留まり

どのステップで落ちているかを特定し、注力する選考段階を決める

チャネル別

スカウト媒体/エージェント/リファラル/自己応募/その他

次期の予算と工数をどのチャネルに寄せるか

ポジション別

職種別、レイヤー別の歩留まり差

難所のポジションに固有の打ち手が要るかを判断する

施策別

件名変更・検索条件再設計・面接官変更などと指標変動の紐付け

効いた施策を翌期の標準手順に残すか決める

時系列

月次のトレンド、季節要因の除外

数字の変化が施策由来か季節要因かを切り分ける

チャネル別では「有力チャネル」「ポテンシャルチャネル」「縮小・撤退候補」の3分類で仕分けます。

分類

判定基準

次期の動き方

有力

直近6ヶ月でROIが立証済み。承諾まで複数名実績

継続投資。運用精度をさらに上げる

ポテンシャル

返信率や面談率は高いが承諾までまだ届かず。または立ち上げ期

文面改善・選考接続の磨き込み。2四半期のスパンで判断

縮小・撤退候補

3〜6ヶ月で目立った成果なし。運用負荷に見合わない

定例を縮小、契約見直し、別媒体へのリソース移転

どの施策で数字が動いたかを特定する

指標変動と打ち手の因果を一つずつ紐づけます。「一度に1要素だけ変える」原則を守っていれば、このフェーズでの特定が楽になります。

下に挙げるのは、紐づけ方の例です。実際の値は採用規模・媒体・ポジションで大きく変わるので、自社の実績に置き換えて読んでください。

  • 媒体A:件名冒頭の変更→開封率が40%台から70%台へ

  • 媒体B:検索条件の年収下限を撤去→対象母集団が2倍、返信率は横ばい

  • 技術面接:評価基準の言語化ワークショップ実施→技術面接通過率が25%から38%へ

  • エージェント:月次定例を開始した契約先→推薦数が1.5倍

ただし、母集団の小さいエンジニア採用では、単月や2週間の数字に誤差が混じります。1回の上振れを「効いた」と即断せず、複数の期間で同じ方向に動くかを見てから打ち手として確定するのが安全です。2週分のABテストで出た差は、仮説として残して翌期にもう一度試す、くらいの温度感が、ちょうどいいと思います。

こうした紐づけが残っていると、「何が効く施策か」が採用チームの資産として溜まっていきます。翌期は「何をやるべきか」の議論を、前期の返信率の推移や辞退理由のメモを起点に始められます。

定性で振り返る

候補者と社内の声を定性で振り返る

数字の裏で何が起きていたかを、候補者と社内関係者から聞きます。

対象

形式

聞く観点

全候補者

スカウト返信時・面談後・選考後のアンケート

初回接点の印象、面談の満足度、会社イメージの変化

内定承諾者

入社後1ヶ月のフィードバックインタビュー

なぜ自社を選んだか、迷った点、決め手、他社との比較軸

最終フェーズ辞退者

辞退直後の短時間ヒアリング(15〜30分)

何が決め手で他社に流れたか、自社のどこに不安があったか

社内面接官

四半期1回の振り返り面談(採用担当が聞き手)

評価基準のブレ、候補者体験への違和感、改善してほしい運用

内定承諾者インタビューの質問リスト

入社後1ヶ月以内に実施。30〜45分が目安。質問は10問前後で十分です。

「採用プロセスで改善してほしかった点」は入社直後の関係性で深掘りすると不満を掘り起こす形になりやすいので、入社後3ヶ月以降に分けて聞く方が安全です。

  • 当時、どんな状況・きっかけで転職を考え始めましたか?

  • 最初に私たちの会社のスカウト・求人を見たとき、どう感じましたか?

  • 当時は複数の会社を並行して見ていたと思いますが、比較する中で私たちの会社の印象はどう変わりましたか?

  • 私たちの会社の選考で印象的だったポイント・人は誰でしたか?

  • 内定をもらった瞬間、何を考えましたか?

  • 最終的に私たちの会社を選んだ決め手は何でしたか?

  • 私たちの会社を選ばなかった可能性は何%くらいありましたか?それは何が起きていたら?

  • 入社直前、何が一番不安でしたか?

  • 入社して1ヶ月、想像と違ったことは?

  • 採用プロセスで「もっとこうしてほしかった」点はありますか?

特に効くのは「私たちの会社を選ばなかった可能性は何%だったか」の質問です。「100%選んでくれた」と言ってもらえる候補者ばかりではなく、「最後まで6:4で迷っていました」と返ってくることが多いです。その「迷いの原因」を引き出せると、次回以降のアトラクト面談で先回りで対処できる論点が明確になります。

最終フェーズ辞退者のインタビュー

特に価値が高い一方で最も実施されにくい施策です。

「辞退された会社から連絡が来るなんて」と思われるかもしれませんが、応じてもらえることは、思うより少なくありません。自分の見ている範囲では2割前後が現実的なラインで、そこから先はレイヤーや打診の仕方で歩留まりが変わります。

重要なポイントは2つあります。

  1. 辞退の連絡が来たその返信で、間を置かずに依頼すること。

  2. 聞き手を、評価した現場の面接官ではなく採用担当に固定すること。

「今回は残念でしたが、次回のために学ばせてください」という姿勢で、30分だけお時間をいただきます。辞退者ヒアリングは、「お願いできたらやる」ではなく選考プロセスの標準工程として最初から組み込んでおくと、依頼のハードルそのものが下がります

最終フェーズ辞退者インタビューの質問リスト

辞退から2週間以内に実施。15〜30分の短時間で十分です。なお、他社の具体的な金額や条件を詳細に聴取するのは避け、「自社の条件感についての印象」を聞く範囲に留めます。収集した情報の社内共有範囲も、事前に決めておきます。

  • 最終的に他社を選んだ決め手は何でしたか?

  • 私たちの会社の選考プロセスで印象に残ったことを教えてください

  • 私たちの会社の選考プロセスで違和感を覚えたポイントはありましたか?

  • 「もし私たちの会社が○○だったら、選んでいたかもしれない」というポイントはありますか?

  • 私たちの会社のアトラクト面談で語られた内容のうち、響いたもの・響かなかったものはどれですか?

  • 私たちの会社の競合(と感じた他社)と比べて、何が決定的に違いましたか?

  • 私たちの会社の条件提示は、あなたの期待値と比べてどう感じましたか?

辞退者インタビューで一番得られる情報は、「自社が見落としていた論点」です。アトラクト面談で十分に語ったつもりでも、候補者の関心に届いていなかった、という事実が後から見えます。「響かなかった点」を率直に教えてもらえるかどうかは、辞退が出てから動いても間に合いません。選考の途中でどれだけ誠実に向き合ってきたかが、後のインタビューに応じてもらえるかを左右します。

社内面接官への振り返り面談の質問リスト

面接官への振り返りは、評価基準を再確認する材料になります。再整理が必要な観点が見えてきたら、CTO・EMと連携して評価基準をアップデートします。四半期に1回、採用担当が聞き手で1人あたり30分程度実施できるとよい改善ポイントが見つかることがあります。

  • 直近3ヶ月で、評価が割れた候補者はいましたか?その背景は?

  • 面接で「会社・チームをこう伝えたら候補者の温度が上がった」という事例は?

  • 面接の前後で、もっと採用担当やHRに準備してほしいことはありますか?

  • 最近の候補者の関心事・質問パターンに変化はありますか?

  • 評価軸で迷う場面はありますか?再整理が必要な観点は?

次期計画に反映する

集めた声を次期の打ち手に反映する

定量と定性を集めただけでは、振り返りは「資料」で終わります。価値が出るのは、一つの打ち手に変えて検証できる形まで落とし込んだときです。

たとえば、最終辞退者インタビューで「技術的なチャレンジが見えなかった」という趣旨の回答が、同じセグメントで3件続いたとします。ここから引く打ち手は、抽象的な「魅力づけを強化する」ではありません。アトラクト面談の冒頭3分を、技術ロードマップと、今まさに解こうとしている課題の説明に差し替える、まで具体に落とします。

そのうえで、次期の同セグメントの内定承諾率を計測対象に置きます。声を聞き、打ち手を一つ決め、その効果を次期に一つの指標で追います。この1サイクルを回しきって、はじめて次期の承諾率や辞退率に変化が見えてきます。

声が3件あっても打ち手が決まらないときは、声の粒度が粗いことが多いです。「魅力が足りない」で止めず、「どの場面の、何の情報が、誰に届いていなかったか」までヒアリングできると十分に解像度を高めることができます。

振り返りのアウトプットと運用

振り返り資料は、社内関係者(カウンターパート・エンジニア・採用チーム)で共有できる形にまとめます。

  • 定量サマリー(ファネル・チャネル別・施策別)1ページ

  • 定性サマリー(候補者の声・社内の声・辞退者の声)1ページ

  • 次期の打ち手優先度(Top 5〜7)1ページ

  • 体制・予算・媒体構成の変更提案(必要な期のみ)

定性の生データ(アンケートの自由記述やインタビューメモ)は量が膨らみがちなので、AIに要約と分類をさせて傾向出しの下ごしらえに使うと、まとめる時間がかなり減ります。最終的な解釈は自分でやりますが、素材の整理はAIに任せていいと思います。

運用だけ見ていると戦略が陳腐化し、戦略だけ議論すると現場がついてきません。その両方を自分で持てるかが、採用担当に求められる一番の力だと思います。前期に何が効いて、どこで取りこぼしたか。それが1枚にまとまっていれば、翌期の計画を勘ではなく実績の積み上げから始められます。

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永井涼平

HRdev代表

レバレジーズ、クラウドワークス等を経て2021年にHRdev創業。18年以上エンジニア採用の最前線に立ち、ログラス・MFS・SALESCORE等の支援実績を持つ。

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