NEW

AIで体験を損なわず、スカウト返信率高めるには

AIでスカウト文面を書いても、それだけで返信率は上がりません。候補者のレイヤー別の訴求、AI臭と事実誤認の除去、一人ひとりへの個別化の3観点で、AIを使って返信率を高める方法を実務ベースで解説します。

AIでスカウト文面を書く会社が増えました。ただ、AIに書かせれば返信率が上がるかというと、そう単純ではありません。使い方を間違えると、返信率はむしろ下がってしまうこともあります。

返信率を分けるのは、AIを使うかどうかではありません。誰に、何を、どれだけ相手に合わせて書くか、そしてそれを適切な体験にできるか、です。

大事にしているのは、候補者のレイヤーに合わせて伝える情報を変えること、AI特有の不自然さと事実誤認を残さないこと、一人ひとりの課題に沿って書くこと。そして、これらを人が設計したうえで、量はAIに引き受けてもらうことです。

誰に書くかで、刺さる情報は変わる

スカウトで最初に決めるべきは、文面のうまさよりも「誰に、何を伝えるか」です。同じポジションでも、候補者によって響く情報は違います。当然ですがAIに対して、この設計部分が出来ていないとただ上手な文章を書いてしまい、適切な魅力付けになりません。

転職ドラフトが公開しているアトラクトブック(公式資料、2025年9月発行)では、候補者の志向性を3つの軸で整理しています。キャリアで重視するものは人生のステージによって移り変わる、という考え方(カレイドスコープ・キャリア理論、Mainiero & Sullivan, 2006)をベースにした分類です。

アトラクト軸

多い層

響く情報

メリット

ジュニア〜ミドル

技術スタック、挑戦度合い、スキルの拡張性

ヘルプ

ミドル〜シニア

裁量の大きさ、プロダクトの魅力、課題の難易度

ビジョン

年次を問わず一定数

解決したい社会課題、一緒に働く人の魅力

同じアトラクトブックの承諾理由データにも、この傾向は出ています。「開発技術や開発環境が魅力的だった」を承諾理由に挙げた人は、想定年収600万円未満で18.3%、1,000万円以上では6.6%まで下がります。逆に「提示されたミッションが魅力的だった」は、600万円未満の7.6%から、1,000万円以上では18.6%に上がります。レイヤーが上がるほど、技術環境そのものより、任されるミッションが効いてきます。

同じ会社の魅力でも、誰に向けるかで前に出す情報を変える必要があります。若手には技術スタックや裁量を、シニアには事業のミッションや課題の難易度を前に出します。レジュメと想定年収から、どの軸を中心に据えるかを先に決めておくと、画一的なアプローチを避けられます。転職ドラフトの使い方は別記事で詳しく解説しているので、媒体ごとの設計はそちらも参考にしてみてください。

AIに任せきった文面は、候補者体験を壊す

スカウトは、候補者にとって企業からの第一印象です。ここで「自分宛てに書かれていない」と伝わった瞬間に、読む手は止まります。

AIに任せきった文面では、これが起きやすくなります。プロンプトで適切に考慮出来ていない場合、どの会社からでも送れそうな当たり障りのない誉め言葉や、整ってはいても温度のない言い回し、レジュメを読んだ形跡のない一般論が並びがちです。受け取る側からすると、自分が大量送信のうちの一人だと一目で分かってしまいます。多くのスカウトを受け取り慣れた候補者は、AIの生成出力に頻出する言い回しから、AIで一括生成されたものだと見抜きます。エンジニアは日常的にAIを使っているので、なおさら文章の手触りに敏感です。

もう一つ起きやすいのが、差出者と内容のずれです。AIは非常に優秀で、レジュメの情報をもとに推論して、魅力的な文章を作れます。ですが一方で、差出者と内容の一貫性が取れていないメッセージになることがあります。例えば、社長名なのに現場の作業者のような視点で書かれているようなことがあり得ます。また、結果としてスカウトの返信は一定得られても、実際の面談でそのギャップが表面化し、双方にとって望まない時間になってしまうことがあります。

さらに気をつけたいのがハルシネーション(AIが事実と異なる内容を作ってしまうこと)です。候補者の経歴を取り違えたり、書いていない実績に触れたり、所属企業を間違えたりします。スカウトは一度きりの第一印象なので、こうした誤りが一つあるだけで信頼を失います。

AIを使うこと自体が問題なのではありません。AIの下書きをそのまま送ってしまうことが問題です。相手に関係する正しい内容になっているか、自分が受け取ってうれしい文面かを、人の目で必ず確認します。返信率の差は、最後はここに出ます。

一人ひとりの課題に沿って、適切な長さで書く

名前や社名を差し込むだけの個別化と、相手の状況に踏み込んだ個別化では、後者のほうが返信率は上がります。自分たちの実感でも、相手を絞って書いたときのほうが、一斉に送ったときより反応がはっきり良くなります。たとえば、相手が公開しているアウトプットや直近の関心に一行触れるだけでも、誰にでも送っている文面ではないことは伝わります。

長く書けばいいわけでもありません。LinkedInが2023年5月から2024年4月にかけて、企業内リクルーターのInMail(LinkedInのスカウトメッセージ)数千万件を分析した調査があります。そこでは、400字以下の短いInMailが平均より22%高い返信率でした。これは英語での文字数なので日本語にそのまま当てはまるわけではありませんが、長く書くほど返信率が上がるわけではない、という方向は同じだと思います。候補者は忙しい中で読みます。要点を絞って、相手の課題に一直線で触れるほうが届きます。

自分たちが現場で大事にしているのは、相手のペルソナと、いまその人が抱えていそうな課題を起点に一通を組み立てることです。「この事業フェーズのこの役割なら、ここに引っかかっているはず」という仮説から書き始めます。マスに送る発想から離れるほど、返信率は上がりやすくなります。

スカウト返信率そのものの考え方は、約1万件のデータをもとに別記事で整理しています。ターゲット設定や文面設計の基礎は、そちらも参考にしてみてください。

AIに「誰に・何を」を渡し、人の精度で量をこなす

ここまでの話は、突き詰めると「誰に、何を、どう伝えるか」を一人ひとり設計することです。これを全候補者に手作業でやるのは、量として無理があります。AIが効くのはここです。

大事なのは、AIに丸投げして文章を作らせることではありません。「この候補者は誰か(レジュメ、レイヤー、想定年収)」「何が刺さるか(どのアトラクト軸か)」「どの基準で訴求を選ぶか」を、人が設計してAIに渡すことです。この判断基準が曖昧なままだと、AIは当たり障りのない文面を量産します。逆に、誰にどの軸を当てるかの基準さえ渡せれば、AIは人が一通ずつ書くのと近い精度で、人にはこなせない量を処理できます。

最後に事実と表現を確認するのは人です。経歴の取り違えやハルシネーション、訴求軸のズレは、人の目で止めます。判断はあくまで人が持ったうえで、個別化の手間をAIに引き受けてもらう。人の精度で、人にはできない量をこなす体制を作れるかどうかが、返信率の差になると考えています。

この記事をシェア

永井涼平

HRdev代表

レバレジーズ、クラウドワークス等を経て2021年にHRdev創業。18年以上エンジニア採用の最前線に立ち、ログラス・MFS・SALESCORE等の支援実績を持つ。

採用のお悩み、30分から相談できます

スカウト運用・媒体選定・採用プロセス設計など、無料でご相談ください

無料相談を予約する

こんな記事も読まれています