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うまくいかない原因を知るための「ファネル」分析の手順

エンジニア採用が進まない時、なんとなく文面を変える前にやるべきはファネル分解。母集団形成から承諾までを段階に分け、どの数字が崩れているかを特定し、段階別の打ち手を整理する手順を解説します。

採用活動が思うように進まないとき、最初にやってしまいがちなのが「なんとなくスカウト文面を変える」ことです。文面を変えても返信が増えず、また別の文面に変える。これを繰り返しても、何が原因だったのかは最後まで分からないままになります。

採用活動は、母集団形成からスカウト返信、面談、選考、内定、承諾まで、いくつかの段階に分けられます。どの段階で数字が崩れているかを先に特定すれば、打つべき手はその段階でほぼ決まります。この記事では、特別なツールを使わず、スプレッドシート一枚で今日から始められる分析の手順を解説します。

採用がうまくいかないとき最初に何を分析すべきか

採用ファネルを段階に分解し、どこで数字が崩れているかを特定するのが先決です。打ち手は崩れている段階でほぼ決まります。

採用が進まないと感じたとき、多くの担当者が真っ先に手をつけるのはスカウト文面です。文面は確かに大事な要素ですが、それは「返信率が崩れている」と分かってから着手すべき打ち手です。返信は十分に来ているのに面談につながっていない場合、文面をいくら磨いても採用は前に進みません。

「うまくいかない」という感覚を、「どの段階の数字が悪いのか」という事実に置き換える。これが分析の出発点になります。原因が見えないまま打ち手を打つと、改善したのかどうかも判断できず、振り返りから何も学べません。

分析の向きも大切です。ファネルを眺めて崩れた段階をただ探すのではなく、ゴールである内定承諾から逆算して全体を見ます。自社の採用目標に対して、どの段階に不足感があるか。そこを起点に「ここが弱いのではないか」という仮説を数字ベースで立て、検証していく。目標から逆算して順に見ると、数字を漫然と眺めるよりも打ち手につながりやすくなります。

まず採用活動を段階に分け、それぞれの数字を並べてみる。崩れている段階が見つかれば、そこにだけ集中すればよくなります。

採用ファネルはどう分解するか

採用活動を母集団形成から承諾まで段階に分け、各段階の数を記録して通過率を出すのが基本です。

採用ファネルとは、候補者と出会ってから入社に至るまでの流れを、段階ごとに分けて数で捉えたものです。スカウト活動が重要となるエンジニア採用では、おおむね次のように分解できます。

段階

何を指すか

取るべき数値

母集団形成

スカウト送付など、候補者と接点を持った数

送付数

スカウト返信

送ったスカウトに返信があった数

返信数 / 返信率

面談

一次の面談(カジュアル面談を含む場合あり)に進んだ数

面談数 / 面談移行率

応募

面談後に本選考へ応募した数。カジュアル面談で応募を促せたかが表れる

応募数 / 応募率(有効・全体)

選考

書類・技術面接など選考プロセスに進んだ数

選考数 / 選考移行率

内定

内定を出した数

内定数 / 内定率

承諾

内定を承諾し入社に至った数

承諾数 / 承諾率

この段階分けはあくまで一例です。例えば、カジュアル面談と選考の位置づけは会社によって異なります。「選考ではなく相互理解の場」として明確に分けている会社もあれば、実質的に一次選考を兼ねている会社もあります。

注目の数字

スカウト返信は母集団の最も外側になるので重要になりますが、その次に注目したいのが応募率です。カジュアル面談で自社の魅力を伝え、本選考への応募を促せたかがこの数字に表れます。

応募率は2つに分けて見ると精度が上がります。社内でぜひ選考に進んでほしい候補者のうち応募した割合(有効応募率)と、見送りになりそうな候補者も含めた全体の割合(全体応募率)です。有効応募率が低ければ、惹きつけ方や訴求の設計に課題があると見立てられます。

スプレッドシートの列設計例

記録は、ポジションごとに次のような表を作るところから始められます。

ステージ

送付数

返信数

返信率

面談数

面談移行率

応募数

全体応募率

バックエンド

80

10

12.5%

9

90%

6

67%

AIエンジニア

40

4

10.0%

3

75%

2

67%

率の列は、前の段階の数で割って自動計算にしておくと、毎週の更新が数分で終わります。ポジションや媒体ごとに行を分けると、どこで数字が落ちているかが一目で見えるようになります。数字を埋めるだけで、感覚だった採用状況が事実として並びます。

実際のオペレーションを行う際は、データ貼り付け用のシート(CSVデータや管理画面のコピペを貼り付ける)を用意して、集計用のページで上記のような表を作成することをおすすめします。

どの数字をどこと比べればよいか

数字を出したら、次は「その数字が良いのか悪いのか」を判断する必要があります。ここで最も信頼できる比較対象は、他社ではなく自社の過去です。

返信率や面談移行率は、媒体や企業の知名度によって大きく上下します。知名度の高い会社の返信率を自社の目標にしても、前提が違うため参考になりますが適切な目標にはなりません。同じ媒体・同じポジションで、先月や前四半期の自社の数字と比べる。これが最も打ち手の良し悪しを判断できる方法です。

期間の区切り方は、月次や四半期など自社の採用サイクルに合わせます。注意したいのは、少ないサンプルで断定しないことです。送付10通で返信1通だった場合の返信率10%は、たまたまの可能性が高く、傾向とは言えません。最低でも100通単位の数字が溜まってから判断するのが安全です。

外部ベンチマークを取りに行く

自社の過去だけでは「市場全体に対して高いのか低いのか」が分かりません。ここを補うのが外部ベンチマークです。外部ベンチマークは自社の数字の伸びしろを把握する情報として使います。

入手先

得られる情報

相談のしかた

他社の人事

同職種・同フェーズの返信率や通過率の実感値

採用イベントや勉強会での情報交換

採用支援会社

支援先全体の職種別データ、改善事例

支援が入っていればヒアリングする

媒体のカスタマーサクセス

媒体内の職種別返信率・平均値

定例や相談の場で職種別の数字を聞く

エージェント

候補者の動向、職種別の決まりやすさ

普段のやりとりで市場感を聞く

これらの情報源は、職種別の返信率や通過率など、自社だけでは持てない数字を持っているケースがあります。媒体のカスタマーサクセスやエージェントは、相談すれば職種別の傾向を共有してくれることも少なくありません。

自社の過去を軸に置きつつ、外部ベンチマークで「自社の数字は市場に対して高いか低いか」を補完的に判断する。この二段構えで、数字の良し悪しの解像度が上がります。

どこがボトルネックかをどう特定するか

定量でどの段階が崩れているかを掴み、定性で候補者体験のどこが弱いかを見立てて、最も効く打ち手を一つに絞るのが要点です。

ボトルネックの特定は、定量と定性の両面から行います。

定量では、段階別の通過率を見て、極端に低い段階を探します。返信率が低いのか、返信は来るのに面談につながっていないのか、内定は出るのに承諾されないのか。崩れている段階が一つ見つかれば、原因の範囲がそこに絞られます。

定性では、候補者ジャーニーを書き出します。これは応募から内定までの候補者の体験を時系列で並べ、どこで気持ちが離れそうかを見立てる作業です。定量が「どの段階で」を教えてくれるのに対し、定性は「なぜ離れるのか」の仮説をくれます。

候補者ジャーニーの書き出し方

候補者が自社と接してから内定までに、どんな体験をするか。次のように時系列で並べてみます。

時点

候補者の体験

整備されていない際に発生する課題

認知

Xや登壇、カンファレンスなどで見かける

「すでに知っている会社」との競争に出遅れる

スカウト受信

文面を読み、会社名で検索する

検索しても情報が薄く、判断材料がない

返信・日程調整

面談日程の連絡を待つ

返信が遅く、他社が先に面談を設定する

面談

担当者と話し、会社の魅力を知る

訴求が弱く、入社後の像が描けない

選考

技術面接などを受ける

選考の意図が伝わらず、見極められている感覚だけ残る

内定・承諾

条件と将来像を踏まえて決める

口説きが弱く、他社の条件に流れる

情報の得やすさ、連絡の速さ、面接の印象、口説きの強さ。この四つを時系列で見ると、自社の採用体験のどこが弱いかの仮説が立ちます。定量で見つけた崩れている段階と、定性で見立てた弱点が重なる箇所が、最優先のボトルネックです。

段階別の打ち手は一つか二つに絞る

ボトルネックが見えたら、課題に対して打ち手は最も効くもの1つに絞ります。一度にあれもこれも変えると、何が効いたのか分からなくなるためです。ただし、採用基盤を大きく作り直すと決めた際には、網羅的に行うほうがおすすめです。

課題

最初に見直す打ち手

スカウト返信率が低い

ターゲット設定から見直す

認知系施策を強化する

自社の魅力を整理・強化する

返信は来るが面談に進まない

訴求の言語化

カジュアル面談の改善

面談前後のオペレーションの改善

面談から選考に進まない

見極めと訴求の設計

面談の目的設定

内定が承諾されない

候補者体験全体の改善

アトラクトプランの設計

段階別の打ち手の詳細はスカウト返信率を上げるための考え方で、ターゲット設定の起点となる検索条件の見直しはエンジニアスカウトの検索条件を最適化する方法で扱っています。

承諾されない場合は、内定そのものより選考の途中で気持ちが離れていることが多くあります。定性で書き出した候補者ジャーニーを見直し、どの面談・どの連絡で熱量が下がったかを見立てると、打ち手が具体的になります。

分析を運用にどう乗せるか

週次15分のファネルレビューを型として回し、誰が何を見て何を決めるかを固定するのがおすすめです。

分析は一度やって終わりではなく、毎週の運用に乗せて初めて効果を生みます。重い分析会は続かないので、週15分のファネルレビューを型にして回します。

毎週、次の三つだけを決めます。

  • 見る: 各段階の数字を先週と比べ、崩れている段階を一つ特定する

  • 決める: その段階に対する打ち手を一つ決める

  • 担う: 誰がいつまでにやるかを決める

この三つを15分で回すだけで、感覚での議論が事実ベースの意思決定に変わります。数字の更新はスプレッドシートの自動計算やAIに任せ、会議では「どこが崩れたか」と「次の一手」だけを話します。

数字の整理と仮説出しはAIに任せる

ファネルの数字が溜まってきたら、整理と仮説出しをAIに任せる方法もあります。

スプレッドシートのデータセットをGeminiやClaudeに読み込ませると、段階別の通過率を整理したうえで、どこが崩れていそうか、なぜ崩れていそうかの仮説まで添えてくれます。担当者は出てきた仮説を吟味し、打ち手を決めることに時間を使えます。

ただし、ここは社内ルールの確認が要る部分です。候補者の氏名や経歴といった個人情報を外部のAIサービスに渡してよいかは、自社の情報管理方針や利用するツールの契約形態によります。入力する前に、社内の取り扱いルールとサービス側のデータ取り扱いを確認してください。

個人を特定できる情報を外し、段階ごとの数字だけを渡す形にしておくと安全です。

経営層への採用報告としても使う

このファネルレビューの型は、経営層や部門責任者への採用報告フォーマットとしてもそのまま機能します。「送付◯件・返信◯件・面談◯件、今週は面談移行率が落ちたのでターゲット設定を見直す」という報告は、進捗と打ち手が一目で伝わります。

採用報告を受ける側にとっても、ファネルのどこが詰まっているかが分かれば、リソースや予算の判断がしやすくなります。担当者の頑張りを感覚で報告するのではなく、ファネルの数字で現在地と打ち手を共有する。これが、採用を再現性のある活動に近づける第一歩になります。

採用の分析は、特別なツールがなくても今日から始められます。まずは選考フェーズごとの数字を並べ、崩れている一段階を見つけてみましょう。採用成功に向けたヒントになれば幸いです。

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永井涼平

HRdev代表

レバレジーズ、クラウドワークス等を経て2021年にHRdev創業。18年以上エンジニア採用の最前線に立ち、ログラス・MFS・SALESCORE等の支援実績を持つ。

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